【シリーズ:脳の予測機能と痛み】第3回:脳の予測を書き換える

今回はシリーズ最終回です!

第1回で「脳は予測マシン」、

第2回で「予測が暴走すると慢性疼痛になる」

という話をしました。

今日は「じゃあ、どうすればいいの?」っていう、

一番大事な部分をお話しします。

キーワードはやはり「ファシア」です。

ファシアって?

「ファシア」って聞いたことありますか?

最近、健康番組とかでも取り上げられるようになってきたんですが、

まだ馴染みがない方も多いかもしれません。

ファシアは、筋肉、骨、臓器など、

全身を包み込んで、

全身を一つにつないでいる

薄い膜のような組織です。

昔は人体解剖の世界では筋肉や内臓をみるのに切りとられて、

ただ邪魔者扱いされていた可哀想な組織でもあります(笑)

しかし最近の研究では、

ファシアが重要な役割を果たしていることが分かってきました。

例をあげると、

ファシアには皮膚の10倍以上もの

神経終末(神経のいちばん先っぽの部分)が密集しているんです。

ファシアは体で最も豊か(リッチ)な感覚器官なんです。

→ファシアについての特集はこちらから

また、ファシアは

  • 体の動き
  • 位置
  • 張力
  • 圧力
  • 痛み

などの情報を、常に脳に送り続けています。

これを「内受容感覚」と言います。

脳はこの情報をもとに、

「体は今、どんな状態か?」を判断して、

予測を立てるんです。

つまり、ファシアは脳の予測の「情報源」なんですね。

そして、ここからが重要なんですが…

ファシアが硬くなると、脳への情報が「ノイズまみれ」に

  • ストレス
  • 運動不足
  • 長時間の同じ姿勢
  • 炎症

こういうことが続くと、

ファシアが硬くなったり、滑りが悪くなったりします。

すると、ファシアから脳に送られる情報が

「ノイズまみれ」で曖昧になるんです。

例えるなら、電波の悪いラジオみたいな感じです📻

「ザー…ザー…」とノイズが入って、

何を言ってるのか分からない状態です。

慢性的に痛みがある方の脳は、

「痛み」という強い予測バイアス(過去の経験をもとに、

脳が先回りして決めつけてしまうクセ)を持っています。

だから、この曖昧な情報を

「危険信号だ!」と誤って解釈しやすいんです。

そして、痛みを感じさせて、

体を守るために筋肉を緊張させる。

でも、筋肉が緊張すると、

→ファシアがさらに硬くなって

→血流が悪くなって

→炎症が起きる

すると、ファシアからの情報がさらに悪くなって、

脳の「痛み予測」がますます強くなる…

という悪循環にはいっていきます。

悪循環を断ち切るには?

じゃあ、どうすればいいのか。

答えはシンプルです。

  1. ファシアの状態を改善して、脳に送られる情報の質を高めること
  2. 「動いても痛くない」というポジティブな予測エラーを体験して、
     脳の予測を書き換えること

この2つです。

具体的にできることは、

① ファシアを動かす

ファシアは、動かさないと硬くなります。

だから、適度に体を動かすことが大事。

ストレッチ、ヨガ、散歩、何でもいいです。

「痛いから動かない」じゃなくて、

「痛くない範囲で、少しずつ動かす」

これが、ファシアの滑走性を取り戻す第一歩です🏃‍♂️

② 専門家の手を借りる

鍼灸、マッサージ、理学療法など、

ファシアにアプローチする治療はたくさんあります。

僕も普段の施術では、

ファシアの状態を整えることを意識して施術しています。

③ 安全な環境で「動いても大丈夫」を体験する

これも、めちゃくちゃ大事です。

専門家の指導のもと、

「動いても痛くない」っていう体験を積み重ねる。

そうすると、脳の「動くと痛い」という予測が、

少しずつ書き換えられていきます。

これが、予測の学習なんです。

さて、3回にわたって、

脳の予測機能と慢性疼痛についてお話ししてきました。

ちょっと難しい内容もあったかもしれませんが、

伝えたかったのは、

「痛みは、体だけの問題じゃない。

脳の予測も関わっている。そして、予測は変えられる」

ということです。

もし、長く続く痛みに悩んでいるなら、

一度「脳の予測」という視点で考えてみるのもありかもしれません。

そして、ファシアのケアや、

安全な環境での動きの練習を試してみてください。

きっと、何か変化が起こると思います。

僕たち鍼灸師も、そのお手伝いができればと思っています。

何か気になることがあれば、いつでもご相談くださいね!