自律神経が乱れると、なぜ「慢性疲労」から抜け出せないのか

「たっぷり寝たはずなのに、朝から体が重い」

「休日は家でゴロゴロしていたのに、疲れが抜けない」

「病院で検査しても異常なし。でも、つらいのは本当なのに…」

毎日、本当によく頑張っていらっしゃいますね。

このような、終わりの見えない慢性的な疲れ。

多くの場合、「自律神経の乱れですね」と指摘されることが少なくありません。

真面目な方ほど、「私の生活習慣がいけないのかな」と自分を責めてしまいがちです。

でも、少しだけ聞いてください。

実は、自律神経だけを整えようとしても、なかなか改善しないケースがとても多いのです。

なぜなら、その疲れの主戦場は、体ではなく「脳」だからなんです。

疲れの主戦場は「脳」でした

慢性疲労の正体。

それは、ズバリ「脳のエネルギー不足」です。

私たちの体の中で、もっともエネルギーを消費している臓器はどこだと思いますか?

実は「脳」なんです。

ただ座ってぼーっとしている安静時でさえ、脳は全身のエネルギーの約20%以上を使っています。

そこに、考え事や悩み、将来への不安などが重なると、さらにエネルギー消費は跳ね上がります。

特に問題なのは、「何もしていない時ほど働いてしまう脳」の性質です。

脳には、DMN(デフォルトモードネットワーク)と呼ばれる神経回路があります。

これは、私たちが意識的に何かに集中していない時に、自動的に動き出す回路のこと。

車のアイドリングのようなものです。

このアイドリング状態の時に、脳は

  • 過去の後悔
  • 未来への不安
  • 自分へのダメ出し
  • 終わりのないぐるぐる思考

これらを自動的に生み出してしまいます。

そして驚くことに、このDMNは、脳の全エネルギー消費の60〜80%も使ってしまうと言われているのです。

あなたが休もうとして横になっている時も、頭の中で色々な考えが巡っているなら。

脳はずっとフルマラソンを続けているような状態なんですね。

これが、慢性疲労や、原因不明の不調の大きな背景になっています。

自律神経が乱れる本当の理由

では、この脳のエネルギーはどこで作られているのでしょうか。

それが、細胞の中にある小さなエネルギー工場、「ミトコンドリア」です。

ミトコンドリアが元気に働いてくれることで、私たちの体はエネルギー(ATP)を生み出します。

このエネルギーがあって初めて、神経がスムーズに情報を伝えたり、自律神経が適切に切り替わったりできるのです。

しかし、慢性的な疲れを感じている方の多くは、このミトコンドリアがうまく働けていません。

エネルギー工場が、ストップしかけている状態なんですね。

Screenshot

その結果、

  • 朝からだるい
  • 少し動くとぐったり疲れる
  • 常に緊張している(交感神経が入りっぱなし)
  • 夜になってもリラックスできない(副交感神経へ切り替わらない)

といった「自律神経の誤作動」が起こります。

つまり、自律神経の乱れは「原因」ではなく、エネルギー不足の結果として起きていることが多いのです。

脳と体を回復させる3つの鍵

では、どうすればこの疲れのループから抜け出せるのでしょうか。

脳とミトコンドリアを元気にするための、3つの大切な視点をお伝えしますね。

① 脳のエネルギー原料をきちんと入れる

「食事はしっかり摂っているのに疲れる」という方は、脳に必要な栄養が届いていない可能性があります。

脳のエネルギー代謝には、さまざまな栄養素が不可欠です。

  • タンパク質(神経伝達物質の材料になります)
  • (女性は特に不足しがちです)
  • ビタミンB群
  • マグネシウム
  • DHA(良質なオイル)
  • CoQ10

これらを意識して、コツコツと体に満たしてあげることが大切です。

② エネルギー経路を切り替える

慢性疲労の脳は、普段のエネルギー源である「ブドウ糖」をうまく使えなくなっていることがあります。

そこで注目したいのが、もう一つのエネルギー源である「ケトン体」です。

MCTオイル(中鎖脂肪酸)などを上手に取り入れて、ケトン体回路を回してあげると、脳の強力な代替エネルギーになります。

脳の炎症を抑えたり、修復を助けてくれる働きも期待できるんですよ。

③ 考えすぎを鎮める「行動」

脳のアイドリング(DMN)による浪費を止めるには、「考え方を変えよう」とするよりも、「体の使い方」を変えるほうが近道です。

意識を「今、ここ」に向ける行動が、脳の暴走を鎮めてくれます。

  • 軽い運動(散歩など、リズム運動がおすすめです)
  • マインドフルネス(呼吸に意識を向ける時間)
  • ジャーナリング(頭の中のぐるぐるを紙に書き出す)
  • 目的を持った作業(料理や掃除など、手先を動かすこと)

これらは、脳疲労を和らげるのにとても効果的です。

難しく考えず、心地よいと感じることから始めてみてくださいね。

鍼灸の施術では、こうした脳と体のつながりをとても大切にしています。

鍼やお灸は、自律神経の調整はもちろん、脳の血流を促し、ミトコンドリアを活性化させるスイッチを押すことができます。

肩こりや腰痛といった「部分」だけでなく、脳のエネルギー状態という「全体」を見ることが、回復への近道になります。

慢性的な疲れは、ただ「休めば治る」という単純なものではありません。

「年齢のせいだから」

「更年期だから仕方ない」

そうやって、ご自身のつらさを片付けてしまわないでくださいね。

絡まった糸をほどくように、一つひとつ丁寧に整えていけば、体は必ず応えてくれます。

もう一人で頑張りすぎなくて大丈夫ですよ。

あなたの本来の健やかさを取り戻すお手伝いができれば嬉しいです。