「神経✕ファシア」ドクターが語るファシアの可能性③

ファシアと神経──ストレスが痛みに変わるメカニズム

ドクターがファシアについて書いたネット記事をもとに、深堀りをしているシリーズです。第3回は、「ファシアと神経系の相互作用」についてです。当院では物理的な体へのアプローチとともに、精神的な部分、「こころ」にも重きをおいています。東洋医学の思想で【心身一如しんしんいちにょ】といって、心と体は互いに影響しあっていて、分けることが出来ないものと考えます。

それを聞くと「はー、なるほどな」となんとなく分かるような気もしますが、少し現代医学的な面からの説明も付け加えると、より理解が深まると思います。

「ストレスで肩がこる」
「イライラすると腰が重くなる」
そんな経験、ありませんか?

これにはちゃんとした理由があって、ファシアと神経は密接につながっているのです。ファシアの中には、痛みを感じ取ったり、動きを感知したりする神経系のセンサーが分布しています。ファシアは、ただの「膜」ではなく、神経の情報センターのような役割も担っているのです。

この神経とファシアの“会話”がスムーズなとき、私たちは身体を快適に動かせたり、痛みなく過ごせたりします。

精神的なストレスが続くと、交感神経が優位になります。すると、筋肉が緊張し、血流が悪くなり、ファシアも「こわばり」を起こします。この状態が続くと、ファシアが神経に対して「異常な信号」を送り始めてしまい、わずかな刺激でも痛みとして感じやすくなる、いわゆる過敏状態になります。

実際、慢性痛のある人のファシアは、痛みを感じる神経の密度が増えているという研究報告もあります。

ファシアのこわばり → 神経の過敏化 → 痛みの慢性化 → 不安・不眠 → さらにファシアが緊張…という悪循環が起きてしまうのです。

だからこそ、痛みには身体的な治療だけでなく、神経系や心の状態を整えるケアも必要になります。心身一如、昔の人はこういったことが感覚的に分かっていたんですね。

次回のシリーズ最終回では、意外と知られていない「ファシアの水分の流れ」についてご紹介します。乾燥やむくみとの関係、そして人間にとってとても重要な“水”のお話です。