VUCAな私たち

VUCA(ブーカ)とは

VUCA(ブーカ)という言葉をご存じですか?

僕がこの言葉に出会ったのは、以前のブログでも紹介した書籍『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(著:山口周)でした。

ビジネス書でありながら、人間の感性や自己認識(セルフアウェアネス)の重要性を説いたその内容は、治療家としての僕にとっても多くの気づきを与えてくれるものでした。

その中に登場したのが、「VUCA(ブーカ)」という言葉。
もともとは米国陸軍が、予測不能な世界情勢を説明するためにつくった造語だそうです。

VUCAとは

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

この4つの頭文字をとったもので、今の時代の不安定さや先の見えなさを表しています。

読んだ瞬間、「これって、人間の“身体”そのものだ!」と思いました。なんでも人体に当てはめて考えてしまう癖があるようです(笑)

Volatility(変動性)

ストレス、食事、運動、睡眠……
日々の小さな選択や環境の違いで、体の状態は絶えず変動しています。
気温・気圧・感情の揺れも影響します。

だからこそ鍼灸では、その日の“今の状態”に合わせた施術が必要なんです。

Uncertainty(不確実性)

同じ施術でも、反応は人それぞれ。
同じ人でも、その日のコンディションや心の状態によって感じ方は違います。

「なぜ効かないのか」ではなく、「なぜ今日この反応が出たのか」と探っていくことが大切です。

Complexity(複雑性)

体は筋肉や骨だけで出来ているわけではありません。
神経・ホルモン・免疫・Fascia(ファシア)など、それらが密接に関係し合って私たちの体を構成しています。

たとえば、首の不調が実は内臓やストレス由来だったり。
足首の硬さが歯の痛みに関係していたり。
だからこそ、局所だけでなく“全体”を見る必要があるのです。

Ambiguity(曖昧性)

クライアントさんから「ずっと同じ場所が痛い」と言われても、よくよく話を聞いていくと、

・お風呂では楽になる
・痛む場所が日によって微妙にズレている
・言葉にできないけど「なんか変」

そんなことはよくあります。

「痛み」は、時間・環境・意識によって揺らぐ、非常に曖昧なもの。


言葉にしづらいものをどう聞くか、どう受け取るかも大事なポイントです。

鍼灸は、「体の曖昧さ」と相性の良い治療法のひとつだと思います。

VUCAの時代。
そして、VUCAな私たちの身体。
僕たちは、常に不安定で曖昧なものを抱えながら生きています。

そんな中で、自分の体の声に耳を澄ませる時間はとても貴重です。
鍼はその“気づき”を助けてくれます。

アンバランスさも楽しめる、そんな余白を持てるように。
僕は、そんな治療を心がけています。